英検やTOEICなど、数ある英語資格の中で唯一「国家資格」の称号を持っている「全国通訳案内士」。
名前の通り、海外からのお客さんを通訳を通じて案内(ガイド)することを目的とした資格です。
もともとは有償の通訳ガイドを行う際に必須の資格でしたが、2018年に「通訳案内士法」が改正され、この資格を持っていないガイドでもお金をもらってガイドを行うことができるようになっています。
それでも英語資格の最高峰ということで、英語学習者として「いつかは越えなければならない壁」として受験することを考えていました。
そして一昨年の2017年、ついに受験することを決めたのです。
11,700円という高価な受験料を払って、その壁に向かって「頼もう!」と立ち向かうことになりました。
その結果・・・
2017年と2018年の2年連続で全国通訳案内士の試験を受験して、どちらも不合格になってしまいました(涙)
なぜ?なにゆえに??
そんな疑問への答えは非常に明快でシンプルです。
英語以外の科目の勉強が圧倒的に足りなかったから。
今回はそんな私の失敗談をお伝えして、この資格に挑もうとする英語勇者への一里塚とさせてもらえばと思います。
全国通訳案内士とは?
まずは概要をお伝えしましょう。
全国通訳案内士のプロファイルの紹介です。
【資格の概要】
・外国人を日本全国に案内し、日本の歴史や文化、習慣を外国語で紹介する「通訳ガイド」の仕事の資格
・言語資格では唯一の国家資格
・改正通訳案内士法(平成30年1月4日に施行)により、通訳案内士の名称が「全国通訳案内士」となるほか、通訳案内士の業務独占規制が廃止され、資格を有さない人であっても、有償で通訳案内業務を行えるようになった
・ただし資格不保持者が「通訳案内士」の名称は名乗ることは不可
・合格後は、5年に一回の定期研修を受ける必要がある
【資格試験について】
・一次試験と二次試験がある
・一次試験は(外国語・日本地理・日本歴史・一般常識・通訳案内の実務)
・二次試験は口述(プレゼンテーション・コミュ二ケーション・文法及び語彙・発声及び発音・ホスピタリティ)
・合格の規準はおよそ「7割」
・国資格の中では中程度の難易度
このような感じです。
合格率は各言語によって異なったり、その年に受ける受験者数によって変わってきます。
英語に関してはメジャーな言葉なので、だいたい「一次試験は15%前後、二次試験は50%前後」の割合で推移しています(神田外語学院ホームページのデータより)
こうしてみると、まずは一次試験を突破することが重要ということがわかりますね。
不合格体験記その1(2017年)
では私の不合格の体験談をお送りしましょう。
まずは受験を決めた2017年のこと。
英語を勉強するものとして「挑まねばなるまい、なぜならそこに通訳案内士があるから」という、登山家かアントニオ猪木かという心境で勉強を開始したことが今では懐かしいです。
資格の勉強を始めたときの私の英語力は、
・TOEICスコア725
・工業英検2級
・翻訳検定【実用レベル:英文和訳】
になります。
このうち翻訳検定は合格証書がどこかにいってしまったこと、それからほとんど勉強してないことなどがあり、あまり公的に発表するのも憚られるということで、履歴書にもブログのプロフ欄にも掲載していません。
まあ英語のレベル的にはそうだという感じを掴んでもらえればと思います。
で、一応はある程度の基礎力はあるつもりなので(文法や語彙)、正直、一次試験の英語にはそこまで恐れを抱いてはいませんでした。
本屋で通訳案内士の過去問を立ち読みしても、そこまで難しい語彙が出ているわけでもなく、しかもマークシートもあるので記述式さえしっかり勉強したらなんとかなると。
問題はそれ以外の科目で、特に「地理」がネックでした。
試験に出てくる地理系の問題は「~火山の種類」とか「東北の~地形」とかなど、自分の生活には全く何の関係もゆかりもない知識ばかりが出てくるので「これはまずいな」と思っていたのです。
「日本の歴史」は得意でしたし、「一般常識」はニュースをしっかり見ていれば対応できると考えていたので、この時点では「日本の地理」のみが一時突破の足かせになりそうでした
*「通訳案内の実務」の科目は次の年の受験の際に加わったので、2017年の時点では出てきていません
ということで、とりあえず資格試験勉強の王道である「過去問」「対策テキスト」の2種類を購入することにしました。
決めたのは法学書院の「通訳案内士:英語ー過去問題解説」「通訳案内士:地理・歴史・一般常識ー過去問題解説」と、語研の「通訳案内士試験:英語一次・二次:直前対策」「通訳案内士試験:地理・歴史・一般常識:直前対策」の4冊です。
過去問で出題の傾向を掴み、直前対策テキストとともに何度も繰り返して出題パターンを体に染み込ませる方法。
こうした語学試験は問題そのものは同じでないにしても、使われる語彙や文法はけっこう頻出していることが多いので、自分の今までの資格試験の経験からしてベストと言えるやり方ですかね。
特に直前対策には二次試験の対策も載っているので、これはかなりお得です。
ということで、この日からこの4冊を徹底的にやりこむことにしたのです。
そして迎えた試験当日。
けっこう自信満々で会場入りしました。
試験会場はなかなかの数の受験生が集まっていて「ほほう、これが英語の鬼どもが集う修羅の場所か」などと一人で軽口をたたく余裕さえ出ていました。
会場は大学の教室で、すでに受験生が座席に座って勉強しています。
ざっと見たところ、年齢層は高めな印象でした。
学生は意外に少なく、むしろ退職後のおじさんとか、主婦風の女性が多いように思えました(TOEICの会場とは真逆の年齢構成です)
そして始まった試験。
試験の時間は長く、一日仕事です(以下がスケジュール)
【外国語】10:00~12:00
【日本地理】13:30~14:10
【日本歴史】14:40~15:20
【一般常識】15:50~16:30
朝の10時に始まって、終わるのが夕方の4時半。
まさに一日仕事です。
試験会場は遠方だったので、この日は市内のホテルに宿をとっていたくらいです。
助かるのは外国語が一番初めにきていること。
集中力が必要な英語の試験解答にはもってこいです。
こんな感じで以外に全部マークシートでした。
記述式があると思っていたので、これは嬉しい誤算でしたね。
試験内容は「JRの乗り方やパスの使い方、夜の工場ツアーの内容、茶道の心、日本の観光地に関する外国人との対話文、最後は祇園や能などの選択式」などなど。
英語のレベルはTOEICスコア600くらいあれば、余裕で理解できます。
あとは上に挙げたような日本の文化や歴史に対する知識を勉強することですかね。
自分的にはけっこう早めに終えて、少しうとうとする時間ももてました。
試験時間が終わり、いったん昼休憩です。
そして再び昼からの試験。
日本地理、日本歴史、一般常識の順番です。
試験の時間はそれぞれ短くて、40分ずつくらいですかね。
地理は…厳しかったです。
一応勉強していたのですが、そこからは全く予想外の方向から出題されてきました。
北海道の観光スポットの場所や、全国のつり橋の名前とかなど、「そんなん分かるか!」的なものばかり。
たぶんテキストを真剣にやりこまなかったせいでしょう(自業自得)
「あちゃー」と思いながら、続く日本歴史に。
これはほぼ「完璧」でした。
お寺や神社の名前や街道の種類など、得意なジャンルばかりです。
普段からの「歴史オタク」ぶりが功を奏した感じでした。
そして最後の一般常識。
これが一番キツかったですね。
基本的にニュースに出てくるような時事ネタがメインかなと思っていたら、伝統工芸品の名前とか、歌舞伎の舞台の説明など、これも「こんなん一般常識ちがうわ!」的な感じで、ほとんど「?」な状態でした。
というか、はっきりいって自分の勉強不足だったんでしょう。
結果は、
【外国語】合格
【日本地理】不合格
【日本歴史】合格
【一般常識】不合格
という通知が、試験から一月くらい後に郵送されてきました。
予想通りすぎる結果に「おおせの通り」と平伏させて頂きました。
これが第一回目の試験チャレンジです。
不合格体験記その2(2018年)
通訳案内士試験の良いところは、試験数が多いので、どれかが合格していたら、翌年はその科目が免除されて再び受けられることです(一年のみ)
なので、翌年の2018年は「英語」「日本歴史」を除いた「日本地理」「一般常識」の2科目で受けられるはずでした。
2科目なら集中して勉強できるし、試験時間も短くなるから楽だなと思っていたのですが、ところがどっこい、翌年から新しい科目が加わることになりました。
それが「通訳案内の実務」です。
よく分からなかったのですが、どうも法律を絡めた通訳案内士の知識問題になっていて、旅行業に関することや、外国人観光客の文化的な違いを理解した上での対処の方法などが、試験の内容になっているようです。
さっぱりわからないので、これもテキストを買って勉強することにしました。
これは意外に簡単で、テキストを一通り見て問題を解けば、それなりに理解できました。
問題は残りの2科目。「地理」と「一般常識」です。
自分はどうも観光地の名所とか、山とか湖とか江戸文化とかのジャンルは覚えにくい頭の構造になっているようで、これを防ぐには過去問系テキストだけではなく、地図帳とかを見て視覚的に覚えてた方がよいのではということになり、実際にそういう本を購入しました。
それぞれパラパラとめくってみると、意外に面白くてハマってしまったので、これなら勉強を進められるなと。
「これで完璧やで」
そうほくそ笑みながら、次なる試験に向けてひたすら地図帳を睨む日々が続いたのでした。
そして迎えた試験日。
前年と同じ会場でしたが、午前中の外国語の試験を免除されていたので、昼から悠々と乗り込められる重役出勤な気分を味わえました。
「午前の試験はどうだったかね?君たち」
などと会場前の広場で昼食をとる受験生を見ながら心の中でつぶやき、自分の試験会場に向かっていきます。
そして午後。
問題が配られ、今年の最初の試験科目「通訳案内の実務」が始まりました。・
問題はテキストで勉強した通りで、旅行業の基本的な知識や、著作権の問題、道路運搬法、あとは食べ物でイスラムのラマダンのくだりが出てきました。
このへんは完全に勉強済みだったので、まったく問題なしにクリアです。
すっごく余裕をもって試験を終わらせることができました。
そして続くのが「日本地理」。
こ、今年はどのような問題がでているのじゃ・・と震えながら見ていったところ、序盤は案外スムーズに解けました。
定番の北海道の国立公園の名称から始まって、外国人観光客が訪れる人気の市場、北アルプスのアルペンルートから見れる滝の名前など、まずまず勉強済の場所が続きます。
神社や美術館、湾の名前など「オーマイガーッ」なものばかりで、再び「????」が続きました。
マークシートなのでなんとか完答できましたが、これも自信はないです。
そして最後の「一般常識」。
これはしょっぱなから「むむむ・・」でした。
観光地を訪れた外国人の支出額や、その年の日本人の出国数、労働基準法の法定時間など、数字に関するものが多くて「地図帳はなんだったんだ・・」とひたすら落ち込む連続でした。
ここは完全に時事問題であるし、さらに観光白書など政府の広報サイトからの数字問題が出ていたようで、こちらは全くノーガードだったので「やられました」。
「ふぅ・・」と肩を落として会場を後にし、その年もとっていたホテルに帰った後は、その日の夜に会う友人と一緒に焼き肉で「やけくそパーティー」をしたことが懐かしいです。
そして結果は・・・不合格でした。
【通訳案内の実務】合格
【日本の地理】不合格
【一般常識】不合格
残りの科目を全部合格していないと、次の二次試験に進めないので、この時点でアウトでした。
しかも科目免除が適用されるのは一年間だけなので、次に受けるならば再び全5科目を受験しなければならないという・・・
しばらくは止めておこう、そう誓った2018年の秋のことでした。
今後の対策法&まとめ
以上が全国通訳案内士の不合格体験記です。
「地理」「一般常識」が私のネックとなったまま、最後まで一次試験の壁を突破することができませんでした。
どちらの科目も通訳案内には必須の知識なので、受からなかったのは仕方ないといえますね。
人によって得意・不得意はあると思いますが、私のように地理や一般常識が苦手な人は、市販の過去問やテキストだけでなく、ふだんから「るるぶ」やその他の旅行雑誌、旅行サイトに目を通しておいた方が良いと思います。
あとは政府の観光情報サイトも定期的にチェックしたりするのも良いですね。
あと英語はTOEICスコアが900もしくは英検1級をもっていれば、免除になるので、英語試験が面倒であれば先にそういった資格を取っておくのもありです。
私は進むことができませんでしたが、二次試験の口述の対策は動画で良いものが多く出ているので、それを参考にするとよいと思います。
通訳ガイドはこの資格なしでもできるようになったので、語学さえできれば誰でも外国人を案内できるようになった時代。
それでも、全国通訳案内士の資格をもっているといないのでは、ガイドをするのに与える信頼度が高くなるというものです。
海外旅行に行って、現地の民間ガイドを雇うよりも、国家認定のガイド資格を持った人にガイドしてもらう方が安心感が出ますからね。
全国通訳案内士はまさにその「信頼感」を相手に与えることができる語学系資格だと思います。
ぜひまたリベンジを狙いたいと思います!
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