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【ドラキュラZERO】吸血鬼ヴラド国王の誕生!そして愛と哀しみの果てに・・・

2016年6月26日

映画館鑑賞作品、および、例によってブログレビューのために再びDVD鑑賞した映画です。

公開当時は「予告編でかなり期待していただけに、その出来栄えは如何に?」という感じでドキドキしながら見に行きましたが、いや~実際にかなりの良作でした。

配役もストーリーもなかなかのもので、CGによる映像の迫力も満点!

最後まで飽きずに手に汗を握る勢いで見ることができましたね。

ドラキュラといえば、ブラム・ストーカーの「ドラキュラ伯爵」で世界的に有名。

歴史上の実在の人物「ヴラド・ツェペシュ」がそのモデルとなっています。

映画のストーリーはフィクションと歴史的背景が巧妙にミクスチャーされており、一見フィクションと見える荒唐無稽な状況や描写も、よく見れば歴史のそれがメタファーとして多くの採用されているよ的な感じ。

ヴラドとワラキアが直面した歴史のあれこれを述べれば、映画のあらすじや人物描写も深みを増すかもしれません。

*「続編」情報を記事の最後にリンク付けしています。

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ヴラド・ツェペシュとドラキュラ、その歴史的背景

1431年にヴラド2世の次男として生まれ、オスマン帝国の人質時代、そしてそのオスマンの後援を経て、バルカン半島の小国ワラキアの領主となります。

ワラキアを含むトランシルヴァニア地方(現在のルーマニア中部)は、南からバルカン半島の支配をもくろむオスマン・トルコ帝国の圧迫を受けており、キリスト教世界の最前線として常に戦う運命にありました。

最初はオスマンに従順だったヴラドですが、やがて反旗を翻し、帝国との闘争にその生涯を費やすことになります。

ヴラドの別名は「串刺し公」。

串刺しの刑そのものは古代ローマの昔から存在していました。

もちろんヴラドが生きた当時もキリスト教国やイスラム教国で行われていて、これをヴラドは対オスマン闘争だけでなく、自国内の権力闘争にも多用していたと言います。

そしてそれが彼をその名で呼ばせしめる結果となったとか・・・・

彼がドラキュラと呼ばれて悪魔の化身のモデルとなった背景には、この串刺しに代表される残虐さと、対オスマン帝国との戦いで、味方だったハンガリーによる宣伝が大きく影響しているといえるでしょう。

当時のハンガリーはキリスト教国であり、地理的にもトルコとの国境近くということで、ローマ教会や西欧からイスラム勢力への砦として期待されていましたが、度重なる対オスマン戦の失敗もあり、軍を収めたいと考えていたのです。(塩野七生女史の著作に詳しく述べられています)

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一方で最前線の味方国である、ワラキアやアルバニアなどのトランシルバニア地方の小国が、オスマン帝国相手に善戦を続けていたことで、他の西欧諸国やローマ教会からのイスラム戦継続の支持が集まり、容易に矛を収めることができなくなっていました。

このためハンガリーは、対オスマン戦をもっとも激しく進めていたワラキア公国のヴラドを捕え、以下のような理由で罪をなすりつけて、他の西欧カトリック教国やローマ教会への言い訳としただけでなく、敵であるオスマン帝国との密かな講和を目指したのです。

ヴラドはオスマン帝国に内通している

ヴラドは人を無差別に殺し血肉を食らって晩餐を開いた

ヴラドは田畑を燃やして農民を飢えさせた

などなど・・・

こうしてキリスト教世界の一身の期待を背負った英雄ヴラドは、ハンガリー王によって数々の汚名を着せられた上、幽閉されることになったのでした。

この際、妻が塔から投身自殺をしたと言われ、そうした経緯が後のヴラドの「ドラキュラ伝説」に発展したといわれています。

なお、ドラキュラの名前の由来は、1431年にヴラドの父ヴラド2世が神聖ローマ帝国からドラゴン騎士団の騎士に叙任され、ドラクル(竜公)の名を称したことが源流。

この竜公の息子であったヴラドは、竜騎士の竜(ドラコ)の子供ということで、「竜の息子」、つまり小竜公となり、それがドラキュラという読みになりました。

ワラキアの”織田信長”的存在だったヴラド公

冷徹な統治者でもあったヴラドは、それまで貴族の合議制であったワラキアの政治体制を中央集権に変えようと試みます。

自身の直轄軍を設立した上で、政治改革に反対する大貴族との闘争に打ち勝ち、権力を掌握しました。

その後、臣従していたオスマンとの関係を断絶し、全面戦争に発展。

数の上で圧倒的に劣るワラキアは、押し寄せるオスマン帝国軍を国土を焼き払う焦土作戦とゲリラ闘争で徹底抗戦し、数度に渡って侵攻してきたオスマン軍を撃退することに成功するのでした。

その際に敵に徹底的な恐怖を与えるために、大量のオスマン兵を串刺しにして城内に残して、入城したオスマン軍の戦意を喪わせます。

結果オスマン帝国軍は撤退しますが、軍による侵略は諦めた代わりに、政治謀略でヴラドの失脚を狙います。

ヴラドの弟を支援して、クーデターを起こさせたのです。

それは見事成功し、ヴラドはトランシルバニア地方に亡命することに。

そしてヴラドは亡命先でハンガリー王によって捕えれ、幽閉されることになるのです。

12年に及ぶ幽閉生活から解放されたヴラドは、カトリック教国の支援を受けるために正教徒からカトリックに改宗し、ハンガリー王の妹と結婚。

こうして故国ワラキアの王に返り咲き、再びオスマン帝国との戦いを繰り広げ、1477年にブカレスト郊外で戦死。

45歳の苛烈な生涯でした。

こうしてみると、ヴラドの生き様は、まさに日本で言えば戦国武将のそれであり、強大な国に囲まれてもなお、その旺盛な戦闘意欲と行動を止めずに生涯を敵との戦いに捧げたという意味では、山中鹿之助とその主人である尼子勝久のそれに酷似しているといえます。

また絶対的な中央集権化を進めるために、直轄軍を編成し、反抗する貴族や勢力を次々に打倒していった革新性と、大国オスマンとの戦いで焦土作戦を展開して勝ち続けたという軍事的才能は、ほのかに織田信長を彷彿とさせますね。

こうして実在のヴラドの生涯を眺めてみると、映画のヴラドの葛藤や苦悩が、かなり肉厚に赤裸々に胸の奥に染み込んでくるというわけです。

映画の展開とあらすじ(超ネタバレ注意!)

映画でヴラドはオスマン帝国の圧迫から逃れるために、崖の洞窟に住む魔物の力を借ります。

そこで魔物と結ぶ契約が「3日耐えれば、元の人間に戻れる」ということ。

耐えるというのは、人の血への渇望ということであり、一口でもすすれば、永遠の魔物となってしまうわけです。

「俺は耐えてみせる」

領民と家族の顔を思い浮かべながら、契約に承諾し、魔物の生き血をすするのでした。

3日限定の魔物と化した瞬間です。

こうして無限のパワーと半永遠の生命力を得ることになったヴラドは、故国に戻り、迫りくるオスマン帝国軍の先遣隊にたった一人立ち向かいます。

圧倒的な魔力と戦闘力で部隊を殺戮したヴラド。

これを見たオスマンの皇帝メフメト2世は、全軍を投入し、ワラキアを制圧することを決めます。

大軍vsヴラド。

一見、魔力を得たヴラドの圧勝に見えましたが、彼の魔物化を知ったメフメト2世は対策を立て、巧妙にヴラドを誘い込みます。

陽動作戦でヴラドとワラキアの本城を引き離すことに成功したオスマンの軍勢は、ワラキア城内に侵入し、住民を次々に殺していきます。

罠に気付いたヴラドは急いで城に戻りますが、ことすでに遅し。

多くの部下や住民を失い、息子さえもがメフメト2世に連れ去られてしまうのでした。

そんな中、愛する妻がオスマンの兵士に追い立てられて塔から落下するのを見たヴラドは、上りかける朝日の中を追いかけますが、助けることは叶わず。

絶え行く息の中で、妻はヴラドに最後の願いを伝えます。

「どうか私の血を吸って・・・そして息子を助けて・・・」

魔物と化して3日目。

それは魔物と約束した最後の日。

朝の光が彼の体を照らしつつある今、数分もすれば、元の人間に戻れるはずでした。

しかし今ここで人間に戻っても息子を助けることはできない。

この日に人の血を吸うこと、それはすなわち、永遠の魔物となることでした。

ヴラドは決断します。

妻の首筋に鋭い歯を立てたのでした。

そう、ついにヴラドは”ドラキュラ”となったのです。

人としての命を捨て魔物となったヴラドの前に、かつての部下が倒れていました。

息も絶え絶えの部下に声をかけます。

「俺の血を飲め」

自分の力で救うことができなかった無念さと復讐の念が、ヴラドをして仲間を作る行動に進ませたのです。

次々と周囲の住民や兵士に血を呑ませるヴラド。

こうして恐怖のヴァンパイア軍団が出来上がったのでした。

映画の余韻と出演俳優のあれこれ

こうしてみると、映画中の魔物というのは、頼るべき強大な力を比喩したものであり、ヴラド率いるワラキア公国にとっては、ハンガリー王国や西欧諸国、またはカトリック教会がそれに相当すると思います。

ヴラドは東欧諸国の主流である正教徒だったのですが、晩年にはオスマンとの戦いを有利にするために、自らカトリックに改宗するんですね。

これなどはまさに魔物の血を飲んだ映画のヴラドそのものの姿といえるかもしれません。

この改宗によって故国ワラキア住民の支持を失いますが、映画中で彼が魔物だと知って糾弾し始めたカトリック僧や住民そのものであり、そうした彼らの存在を通じて、オスマンの大軍を目前にしてでも、異教徒を許さないという「宗教的硬直性」を映画の中で軽く批判しているといえると思います。

まあ映画の最後で、ヴラドがかつて自分を糾弾した僧侶に息子の将来を託しているところなどは、監督のキリスト教会関係者への追従とも見えなくもありませんが(どっちやねん!)

塔から落ちた妻の描写は、本当に伝説通りに描いてて驚きました。

そしてこの奥さん役の綺麗なこと!

カナダ出身の女優さんで、サラ・ガドンさんと言います。

主にカナダのテレビでシリーズや映画で活躍しており、大々的なハリウッドデビューはこれが初めてじゃないかと(違ったらすいません)

エマニュエル・べアール似のヨーロッパ的コケティッシュな魅力満点ですので、おそらくご先祖はフレンチおよびその周辺の中欧諸国なのでしょう。

続編があればぜひヴラドとの熱い生活を描いてほしいです。

そして魔物役のチャールズ・ダンス。

この一見、マイケル・ダグラス似の老俳優さんは、グラフィック・デザイナー出身の舞台俳優さんで、81年の007シリーズ映画版の「ユア・アイズ・オンリー」で出演してから、ハリウッドでも活躍しているよう模様。

この人の魔物ぶりは圧巻でした。

最初に出てきたシーンなど本当にその顔がリアルに怖くて仕方なし。

往年のドラキュラ俳優クリストファー・リーもさもありなんな白塗りメイクは反則ですがな。

あらすじに書いてませんが、この魔物、最後まで実は出てきます。

しかも続くような感じで。

ヴラドに血の契約を行う時、いろいろと説明してたんですが、正直よく分からないまま、最期を迎えてしまい、その結末の不思議さにいまだに頭が「?」です。

なんで復讐のためにヴラドを追うのか?

復讐するなら人間だろう?

だいたい魔物化を選んだのはあんた自分自身だったんじゃないか?

とかいろいろ。

まあ映画を最後まで見れば分かります。

まとめ

最後は映画の主役のルーク・エヴァンズ。

イギリス出身のイケメン俳優さんは、実は私より年下ということを知って結構驚愕。

1979年生まれの35歳ということ。

四十路半ば以降だと勝手に思っていましたから、ちょっと衝撃です。

この人は最近では「ホビット」の船頭であり、弓の達人バルド役でも有名ですね。

タイタンの戦いや、インモータルズのゼウス役など、超人的な強さを持つ役柄が実によく似合います。

顔が非常に精悍で、ギリシャ・ローマ時代の彫刻のようなクラシカルな風貌が、こういう時代劇的な作品にマッチするのでしょう。(逆に現代劇は似合わないかもしれない)

といいつつ、この人、実はゲイであることを公表していて、俳優デビューの前からカミングアウトしていたといいます。

続編が期待できる作品です。

というか、ぜひ作ってほしい。

あの最後はそういうフリでしょう?

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