1996年に公開されて全世界でヒットしたSF大作「インデペンデンス・デイ」の続編。
2016年に公開されたから、ちょうど20年後の再来です。
普段映画を見に行く前は「みんなのシネマレビュー」を見て作品の良し悪しを見極めてから実際に行くかどう決めることが多いのですが、今作はかなりマイナスレビューが多かったので、ちょっと二の足を踏んでいました。
「既視感ばかり」
「大味」
「予想を覆す酷さ」
「中国を意識しすぎ」
などなど、けっこうボロボロな評価でしたね。
その中でも高評価を書いている人もちらほらいて、それがまたいいところを突いたレビューなので、それを見て「これ俺好みなのでは・・」としばし悩まされたという。
結局、他に面白そうな映画がなかったので、見に行ったのですが・・
結果は・・・
めちゃくちゃ面白かった!
いや、「めちゃくちゃ」は盛りすぎですかね(笑)
面白さと不満と
面白い、というのは本当です。
最後まであくびをせずにずっと見れたのは良かったし、前作からのキャラクターがほとんど再出演してるのが、前作を映画館に観に行った「インデペンデンス現役世代」の自分としては、すごく感情移入できて最高でしたね。
スターウォーズシリーズを見るような感じと言いますか。
4Dという触れ込みでしたが、今回は普通に2Dで見ましたけど、全然普通に盛り上がれましたよ。
戦闘シーンとかすごく見ごたえありましたし、最後に向かってオチは分かっているのに、それでも期待して見続けてしまう映像と役者の存在感の力強さにほれぼれしてしまいたしたね。
何より、これはシネマレビューのレビュアーの方の誰かが書いていたことなのですが、
「世界中の多くの人たち、特にかつてアメリカという大国に対して何かしらの“憧れ”を抱いた人たちは、アメリカが再び真の意味で世界的な権威を取り戻すことを心の底では願っているのではないか」
ということ(原文まま)。
私は80年代の洋画、洋楽世界で青春時代を育ったものですから、強くて力強いアメリカ像を徹底的に刷り込まれてるのでしょうね。
でもって、そういうイメージが実際に嫌いじゃない。
もちろん母国の日本が一番なんですが、アメリカは自分の中でいまだに憧れの存在であり続けていることは確かなんです。
たとえ現実は違っていてもね。(実際、今の世界でも経済力・軍事力ともに相変わらず世界最強なのではありますが)
そんな「アメリカ最高!」な映画の中で、唯一不満が残ることは、低評価レビューで上がっていたように「中国を意識しすぎ」というところでしょうか。
別に中国人が配役されてもいいのですが、今回は特に映画の中で出てくる宇宙軍幹部や兵士、世界中の政治家の顔ぶれで米中だけがピックアップされすぎている部分に目が行ってしまったのですよ。
前作では一応、少しだけでも日本の自衛隊も出て来てましたし、他の国の軍隊も最後の宇宙人との戦いの中でピックアップされてました。
あれから宇宙人のテクノロジーを採用して、地球の科学文明が急速に発達した後の統合されつつある地球の話とはいえ、今作ではあまりに中国が映画の設定に収まりすぎているというか。
宇宙人と戦う宇宙軍の兵士やパイロットも、アメリカ人以外は中国人だけでしたね。
全世界が宇宙人の再来に対抗して戦うのだから、他の国の軍人も少しは出してほしかった。
前に書いた映画レビュー「オデッセイ」でもそうでしたけど、最近の宇宙もののハリウッド作品は、やたらと中国が入り込んでいる感じがありますね。
それだけ中国の存在がアメリカ映画界の中で上がってきているのか?
それともハリウッドに金が集まらないので、チャイナ資本がたんまり注がれているからか?(「ミッション・インポッシブル:ローグ・ネイション」も中国のネット通販会社アリババがスポンサーだったな)
そのへんはよく分かりませんが、まあ気になるといえば、そこのところだけが、ちょいと引っかかる部分でした。
でもそんなことは、観てる最中はほとんど気にも留めなかったし(映画を見た後にちょろっと感じたくらい)、映画全体が躍動感に満ちていて、前作からのノリがそのまま踏襲されてる感じがチャイナうんぬんを軽く吹き飛ばしてくれましたっけ。
監督も制作陣も多くが前と同じというのが、大きいですね。
ではそろそろ映画の話に移っていきましょう。
簡単なあらすじ
前作から20年。
宇宙人の侵略を撃退した人類は、残された宇宙人のテクノロジーを利用して、人類文明を大幅に向上させた。
月に基地を設置し、地球全体を軍事衛星で囲んで、さらなる侵略に対して防備を固めた宇宙軍は、月面の基地で起こった重力の異常、地球上で反応を示した謎のSOS信号、かつての戦争で捕らえていた宇宙人が騒ぎ始めていたことから、新たな宇宙人の侵略の意図を察知する。
前回にエイリアンの信号を解読して戦争を勝利をもたらすきっかけを作ったレヴィンソンは、地球防衛軍の部長として、今回も地球上で反応したSOS信号の解読を始め、かつての戦いで地球上に残された宇宙船から、宇宙空間に向かって助けを求める信号だったことを突き止めた。
この信号をキャッチして、ついにエイリアンの本体が地球侵略を開始。
地球防衛軍はあらゆる手を講じて侵略を止めようとするが、ことごとく失敗して、ついに地球上に着陸を許してしまう。
そんな中で、復活を遂げた元大統領ホイットモアとエリア51の研究チーフ、オーキン博士らが、探査チームが月から持ち帰った球体の解体を進めていると、その中にさらに小さい球体を発見する。
それはかつてエイリアンから侵略を受けて滅亡した文明からのメッセージが入っていて、同じく侵略を受けた他の種族と協力してレジスタンスを組んでいということだった。
そこには高度のテクノロジー情報が収納されていて、さらに「人類にレジスタンスの先頭に立ってほしい」とのメッセージも添えられていた。
これを受けた地球側は、球体を奪うことで、レジスタンスの壊滅を狙うエイリアンの意図を利用しようと、球体を餌にして、砂漠でエイリアンを迎え撃とうと作戦を立てる。
このとき囮となる戦闘機のパイロットを買って出たのは、かつての英雄、ホイットマン元大統領だった。
ついにエイリアンとの最終決戦が始まる!
新世代の戦士が登場
一番大事な最期のくだりは、映画館もしくは公開終了後の動画サービスかDVDでご覧になればと思います。
このへんの流れは映像で見ないと面白さが伝わりませんから!
上のあらすじでは書かなかったのですが、本来のこの映画の主役は、若いパイロットとその恋人になるのだと思います。
パイロットの一人は、ジェイクという若い輸送操縦士で、かつてタッグを組んでいたディランとは練習中のトラブルが原因で、以後は疎遠になってたという設定。
このジェイクというキャラが、実に最近のアメリカ映画にありがちな設定で、若くてハンサムだけど、無精ひげが生えていて、アウトローで、上官の命令を聞かないで自分のやり方を通したがるところ。
でもって、だいたいが上司とそりが合わないという(笑)
実際の現場でもこういうキャラが存在するのかよく分からないのですが、アメリカ映画は本当にこういう主人公のキャラ設定が好きですよね。
ほぼすべてのアクション映画の若手主人公は、こういうテンプレなキャラを持っているような気が・・・
一方で恋人役のパトリシアは、ホイットマン元大統領の娘で、現在は大統領補佐官。
もともとはパイロットだったのだけど、父親の介護のためにその道を断念したという設定です。
そのときにジェイクとその相棒であったディランと出会ったようですね。
そしてディランといえば、かつて前作で地球を救った英雄パイロット、スティーブン・ヒラ―(ウィル・スミス)の義理の息子で、彼自身も地球防衛軍のエースパイロット。
このディランとジェイクが、最後にはともにエイリアンとの戦闘で戦い抜いて、ボスエイリアンにとどめを刺すという重要な役割を演じるのですが(ネタバレしてしまった!)、映画全体としては、それほど活躍に画面を割かれなかった印象はありますね。
最後の最後は彼らの活躍無しではエイリアンは倒せませんでしたが・・・
前作からの常連たち
やはり前作からの引継ぎ組である、レヴィンソン(ジェフ・ゴールドブラム)、ホイットモア元大統領(ビル・プルマン)、オーキン博士(ブレント・スパイナー)らの活躍に画面の多くが割かれていて、その割を引いた感がありましたね。
でも引継ぎ組の時代を経た活躍がないと、この映画はちっとも面白くなかっただろうと思うし、若手組には積み重ねのストーリーがないので、やっぱりアクションで魅せるしかなかったんでしょう。
ちなみにオーキン博士は、スタートレックの俳優さんとして有名で、ウィキなどでメイクを取った素の顔を見ると、「ああ、この人か!」とすぐに分かるくらい、特徴的な口元を持つ方。
ジェフ・ゴールドブラムもそうですが、このオーキン博士を演じるブレント・スパイナーさんも、どちらもユダヤ系で、本当にハリウッドにはユダヤ系の人が強い世界なんだなあと改めて感じます。
そしてユダヤ系の役柄と言えば、この人は外せません。
ジュード・ハーシュさん。
1935年生まれの御年81歳です。
この人もロシア系ユダヤ人で、映画の中の配役も、前作ではレヴィンソンの父親で、ユダヤ教のラビを演じてました。(ラビ:ユダヤ教の宗教的指導者、学者)
今作では引退した普通のお年寄りになっていて、老人ホームで前の地球防衛戦争での活躍を本にして公演活動を続けているという設定。
エイリアンの宇宙船が海上に着陸を開始した時に、たまたま居合わせて、そのまま津波に巻き込まれてしまいます。
その後、気絶してるところをたまたま通りかかった子供たちに助けられて、そのまま一緒に避難の旅に出かけるのですが、その先でこれまた偶然にも、息子のレヴィンソンがエイリアンを罠に仕掛けるための作戦を実施中に遭遇し、お互いに「あ!父さん!」、「お!息子よ!」となって(笑)、再び親子でエイリアンとの戦いを開始するという。
このあたりの設定が「大味」とか酷評されるゆえんなのでしょうが、自分的には全然気にならなかったし、むしろドリフのコントの「お約束」的な感じがやたらと面白くて、笑ってしまいましたね。
前作を知らない初めての人なら、なんだこりゃーという感じになるのでしょうが。
とはいえ、そのへんの適当な偶然に出会いも、このお父さん役のハーシュさんのとぼけた雰囲気がすごく自然にマッチできてました。
息子役のゴールドブラムも真面目そうで、それでいてとぼけた雰囲気があるから、この二人はそういうところで息があってるのでしょうなあ。
今回の引継ぎ組で一番活躍していたのは、もちろんホイットモア元大統領を演じていたビル・プルマン。
前作では若々しい姿で、全世界の前で心を打つ演説をしていましたが、もちろん、今作でも心打つ演説はぶちます!
前回よりは短く、場所も限定的でしたが(前線基地に残された数少ないパイロットや整備兵の前で)、今回は引退した元大統領という設定が、そこにすごく説得力を持たせていたような気がします。
ラスト付近で自らの身を犠牲にして宇宙人の意図を伝えようと試みましたが、そこで死んでしまうのかと思いきや、最後はパイロットとして見事に復帰して、男の花道を飾ったというところに、前作で同じく散っていった元軍パイロットのおっちゃんと、トム・クルーズ主演の「オブリビオン」で死んだモーガン・フリーマンを彷彿とさせてしまうのですよ。
そして個人的に気に入ったのが、エイリアンとの戦いの指揮を執ったアダムズ将軍。
引継ぎ組の活躍に助けられた感があるとはいえ、終始冷静に部下に命令を下す姿には、「こんな人が上司なら頼りがいあるだろうな」という頼もしさをずっと感じていました。
顔つきはどちらかというと冷たくて、ドイツ系かなと思わせる節があるのですが(実際にドイツ系アメリカ人)、逆にそういう人が時折見せる笑顔が実にナイスなんですね。
映画の中では目立たない存在でしたが、最後は大統領や副大統領以下の司令部が壊滅したので、前線基地で大統領に就任するという出世ぶり!
次作につながるだろうオーキン博士のセリフ(エイリアンのケツをぶっ飛ばせ!)が実現するとすれば、次作では再びこの人の大統領姿が見れるのですなあ。
この俳優さん(ウィリアム・フィクナー)は「アルマゲドン [Blu-ray]」とか「ブラックホーク・ダウン コレクターズBOX(エクステンデッド・カットBlu-ray)(初回生産限定)」で演じてた前線指揮の軍人姿が一番似合うと思うので、ぜひとも次も戦う大統領として終始戦い続けてほしいもんです。
これが新作のエイリアンだ!
そして最後はもちろん、エイリアン。
前作から少しも変りないその造形と防護服の有様は、まさにプレデターの二重写しのようで既視感ありまくりです。
もっとも今作品の眼目は「友情「家族愛」に置かれていたと思うので、エイリアンについてはそれほど重要に描かれてなかったように思います。
ボスの女王エイリアン以外は本当に雑魚的な感じで、ほとんどいるのかいないのか分からない印象がありましたから。
さすがに女王エイリアンはしっかり恐ろしく描かれてましたが、シガニ―・ウィーバーの「エイリアン ブルーレイコレクション(5枚組) [Blu-ray] 」のように人を食うわけでもないし、プレデターのように馬鹿力で人間を吹き飛ばすわけでもないので、防護服とテクノロジー兵器さえなければ、人間相手と同様に倒せると思わせるところが、「大したことない」感を演出しまくりという。
同じエイリアンでも、人間に共闘を申し出るレジスタンス派のほうに興味のシフトは後半で移ってましたね。
今作ではその実態は、球体の通信ロボ以外ははっきりしないのですが、次作があれば、きっと詳しい実態が描かれるでしょう。
そしてそのときは、エンディング手前でオーキン博士が「このデータがあれば人類は恒星間飛行も可能になる!」と興奮して言っていたように、スターウォーズのような恒星間戦争の様相を呈しているのかもしれません。
またはスタートレックの世界か。
でもそうなったら、スターウォーズとかスタートレックを見りゃあいいじゃん!となるような気がしますが(笑)
それこそ「インデペンデンス・デイ」独特の世界観を前面に押し出さないと、シリーズもの作る意味がないと思いますし、そうなると、いったいいつまで、そして誰から「インデペンデンス」(独立)すりゃあいいんだという。
でもこの大味なプロットが大好きなんで、ぜひ外野のファンのマイナス評価にもめげずに、続々編を制作してほしいなと思いますよ。
ぜひとも次もよろしくお願いします、エメリッヒ監督。
映画「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」予告G(特別予告編)