先月、劇場で鑑賞した作品。いわば火星版の「アポロ13」もしくは「マット・デイモンの火星脱出大作戦!」というところでしょうか。
別の作品を見たときに出た予告編の、
「たった一人で火星に取り残された男が専門知識を駆使して生き残るサバイバル大作戦!」
みたいなノリを見て「おおっ!これは面白そうだ!」と。でも後半から、NASAでの政治的な駆け引きとかの色合いが少々濃くなってきたのを見て、ちょっと様子が違う感がでてきましたねー。
ではそのレビューをみていきましょう。
「オデッセイ」ストーリー
あらすじを三段階に分けてみました。
【前半戦】
火星探査チームが火星での調査中に襲ってきた砂嵐に巻き込まれて基地へ帰還を試みるも、逃げる途中でマーク・ワトニー(マット・デイモン)飛行士が嵐に吹き飛ばされて、彼を死んだと思ったメンバーが火星から脱出するところから始まる。
その後取り残されたワトニーが意識を取り戻して、自分の境遇に驚きつつも、まだ無事だった基地に戻って残されたわずかな資源でサバイバルを試みる。
【中盤戦】
植物学者だったワトニーは基本的な科学的知識と自分の専門分野を生かして食料の自給に成功し、サバイバル生活を堪能。地球との交信も復活して「おっしゃあ!」とガッツポーズを上げるも、思わぬアクシデントが襲来して基地が壊滅し再び絶望の淵へ落される。
【後半戦】
NASA内での政治的葛藤を経てようやく編成された救出チームの健闘と、地球に帰還中の探査チームが乗る宇宙船の活躍によって、ワトニー飛行士の奪還が試みられる。
そしてついに・・・
まだ公開中だと思うので(2016年3月現在)あえて結末に向けてのプロットは明かさないことにします。
オデッセイの感想レビュー
全体的な感想は「思ったより頭を使った」ということでしょうか。
なにせ最初に言ったように、もっと痛快な脱出劇を期待していたので、デイモンの繰り出す科学知識の羅列と、NASAでの職員同士のちょっとした政治的駆け引き(それほどではないけど)が、思ってた以上に複雑で頭が疲れたという感じでして。
特に日本人的には、最終的に中国と手を組むあたりで「えっ?そうくるの?」と首をひねらされました。
MIのローグネイションでもそうでしたけど、いったいどれだけ中国資本が入ってるんだ、最近のハリウッドは、と。
【ミッション・インポッシブル】 戦う女は美しい!『ローグネイション』鑑賞レビュー
国はバブル崩壊でえらいことだけど、企業単位や個人で見れば、この20年で荒稼ぎした分のマネーはだいぶん余ってるんでしょうけどね。
といいつつも、NASA長官役のジェフ・ダニエルズはいい役してました。
NASA全体を生き残らせるか、クルーメンバーをとるか。
苦渋の決断を迫られるも、常に組織の長として己に課せられた役割を忘れない大人の役柄に惹き付けられました。
ちなみにこの俳優さんは名脇役として有名で、前に一度見たクリント・イーストウッド主演の「ブラッドワーク」(2002)でも、その怪演ぶりを見せつけてくれてます。
なにはともあれ、前半のサバイバル生活は非常によかった。
デイモン演じるワトニーの持つ植物学の知識をフルに生かしてジャガイモを自生させるあたりは、小難しい科学用語を除けば、かなり見ごたえがありました。
特に水を発生させる装置を作るあたりの描写なんかは、基本的科学の知識すらない自分のようなじゃがいも頭の人間には、「おおお!」と感嘆するに値するシーンのオンパレードで、さすがはハーバード出身の俳優を起用しただけの知的説得力はあるねえ!と知的興奮の極致^^
地球でのあれこれは、ワトニーが生きてることが確認されたくだりまでは、結構手に汗握るスリリングな展開で面白かったですけど、それから具体的に話を詰めていく段階になると、画面にダレ場ができてきて、ストーリーに緊張感がなくなった感じがします。
あのへんはアポロ13をモチーフにしたのだろうけど、一回あの作品を見て救出劇の流れがわかる立場からすれば、その先の展開が容易に読めるような気がして、あんまりのめり込めなかったかなあという気はしますね。
後半はさすがに緊張感も戻ってきて、特に宇宙服を着て直接ヘルプするシーンなどは、いつ誰かが死ぬのではないかとハラハラし通しでした。
まさかあの手でワトニーが仲間の宇宙船に戻ってくるとは思わなかったけど、これもNASA直伝の荒業なのですかね(笑)
ラストの帰還シーンで、全世界70億人が見つめているとか言いながら、結局出てきたのがイギリスとアメリカと中国だけというあたりが笑えた。
ぜんぜん全世界じゃねーじゃねーかと(笑)
ファイナンス的な背景が、もろに透けて見える描写すぎるんではないかい?という感じですわい。
まとめ
全体を通して、まずまずの面白さだったけど、手に汗握るとか、心が震える!的な作品でないなあという感想が先だって、このへんはアポロ13のそれとは多少違う点だと思います。
知的好奇心を刺激される方向で見れば、まずまず納得できる内容なんじゃないでしょうか。
あと70~80年代のディスコミュージック世代の人とか詳しい人とか。
ワトニーが見つけちゃいんですよね、ルイス指揮官の趣味の悪い音楽データを(笑)
悪口言いながら、他に聞くものないから、仕方なくリピートするうちにハマっていく様子が面白かった。
加えて超個人的な感想ですけど、ワトニーが基地でじゃがいもを自生させようとバイオエネルギーの燃料を探していた時に、ほかの隊員が残してあった排泄物(固形)の袋を取り上げて、「ウゲェ~」とか「オエーッ」とうめき声をあげてた中で、特に、
「ヨハンソンのうん○が一番くせえ!」
と大声を張り上げたところがツボでした。
手前のオペレーターが、問題のヨハンソン
ヨハンソンとは先に脱出した女性飛行士の一人で、知的でクールでまずまずの美人だったのだけど、まさかそういう扱いをするの?デイモンくんは?という感じがして・・・
後半ヨハンソンが別シーンで出てきても、このときのデイモンのセリフが頭にこびりついてまったく美人に見えなくなった(笑)
美人も人間だからそりゃあうん○のひとつもするんでしょうけどね・・・・
男ってのは、女性にいつまでもあこがれと幻想を抱いていたいものなので、こういうKYな発言は厳に慎んでいただきたいもんです、ワトニー選手には。
最後にワトニーが候補生たちにサバイバルの極意を教えるときに伝えた一言。
たとえどんな過酷な境遇に陥ったとしても、目の前の問題をひとつひとつ解決していけば、必ず生きる望みは出てくる
人生での過酷な状況にでも十分通用しそうなセリフに感銘を受けました。
このシーンが映画全体で一番良かったかな。
この言葉を胸に、明日から自分も人生のサバイバルに臨んでいきたいと思います^^
映画「オデッセイ」予告Z