ケーブルテレビのディスカバリーチャンネルのリアリティショー番組「アメリカンチョッパー」から派生したビジネス本である。
表紙に写っているのはポール・シニアという人物。
あご髭にイカつい2の腕、さらにタトゥーとバイクとくれば、バッドボーイならずバッドシニアのイージーライダーを想像してしまうのではないか。
もちろんご想像の通りで、元鉄工所経営者の彼は一代で、アメリカを代表するバイクビルディングカンパニーを作り上げてしまうのだ。
番組について紹介
まずは母体となったテレビ番組を紹介しよう。
趣味だったバイクいじりを仕事にすることに決めたポールシニアは、2000年ごろにオレンジカウンティチョッパーズを創立した。
設立当初は、数少ない従業員の一人である次男のポールとともに、自宅の地下ガレージで細々とオーダーメイドのバイクを製作しているだけだったが、ひょんなことから、2002年にケーブルテレビの取材を受け、それがきっかけで番組がレギュラー化することになる。
主役はもちろんポール一家。
番組といっても、ただ製作所の日常をカメラで追うだけのものなのだが、これが面白いのなんのって。
バイク作りの臨場感やデザインの素晴らしさもさることながら、親父と息子の派手な喧嘩や従業員を含めた、人間劇の模様が爆発的に人気を博したのだ。
本国アメリカから数年遅れの2004年に日本でも放送が開始。
幸いに僕は第一回目から見ることが出来、たまたま見た番組の面白さにハマッて、その後見たり見なかったりしながらも約5年間、視聴を続けた。
転職の国アメリカそのままに、出演してた従業員が入れ替わり立ち代り入ったり辞めながらも、肝心のメンバーであるポールシニア、ポールジュニア(次男)、マイキー(三男)の三人は番組とチョッパーズ人気を支え続ける。
壮絶な親子バトル!
しかし2009年春、ついにポールシニアとジュニアが番組内で激突した。
それもマジ激突である。
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それまで幾度か衝突を繰り返しながらも、なんとかお互い我慢し妥協しながら店を回してきたのが、ついに終焉のときがきた。
原因は労働倫理観の決定的な相違。
結局、次男のポールが店を辞め、続けて三男のマイキーも退職する。
最後に残ったポールファミリーの長ポールシニアは、信頼する従業員とともに巨大化した店(というより会社)を切り盛りすることとなる。
番組は一応、親子の掛け合いが目玉だったこともあり、バラバラになった3人のそれぞれを別カメラで追いながら、バイク製作を中心に据えた人間模様を放映し続けた。
しかし好事魔多し。
2009年に起こったリーマンブラザーズ破綻後の世界的不況、そして退職したジュニアの会社株をめぐる親子同士の裁判沙汰が悪い方向に動き始めたのか、番組内容も質が低下。
恐らく視聴率も落ちていたのだろう。
ついにアメリカンチョッパーズは2010年の春のファイナルシーズンをもって終了と相成ることとなる。(日本放送は未定だとか)
確かなことは不明だが、多分この冬で番組は終わるのだろう。
なんだかんだで足掛け5年間、番組を見続てきたチョッパーファンの僕にとって非常に残念なニュースであった。
ポール・シニアのビジネス哲学とは?
つまりは、こういうあれやこれやの成功譚、失敗譚があって世に出てきたポールシニアというおっさんの、恐らくライターに書かせた書籍が「the ride of a lifetime」というやつなのだ。
そしてこれが意外にまともな内容すぎてシビれた。
子供の頃から苦労してきたシニアは、絶対に一発当ててやると心に誓い、がむしゃらに働き続けた。
ときには鉄工所、ときには海軍の民間輸送船員と身を粉にして働いてきたシニアが、ついに自らのビジネスを立ち上げることとなる。
それは鉄工所経営だった。
共同経営者の友人と共に、鉄鋼ビジネスに奔走するシニアだったが、酒や麻薬におぼれる毎日や共同経営する友人との別れを経験し、次第に独特の勤労倫理を身に着けていく。
やがて鉄工所の経営も軌道に乗り、また趣味だったバイク仲間の影響もあってか、ついにシニアはバイクのオーダーメイドのショップを開くことにした。
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以降は番組紹介で述べた通りだが、そんなシニアの60年に及ぶ人生経験、そして数々の失敗や成功を重ねて培ったビジネス哲学を、自伝書の形でまとめたのが今回の本なのだす。
最後の「~だす」は余計だが、これも僕の勝手な紹介文なので許していただきたいのだす。
ではその内容はどうなのか?!というと、これがもう、とにかく熱い!の一言に尽きる。
燃える男、ポールシニアの内からほとばしるパッションとでもいいましょうか。
比較的冷静な文体の裏に隠された「俺様に見習え!」的なジャイアン魂が目にしみて痛いのであります。(以下、俺様的意訳文)
俺が心の底から読者のみんなに伝えることができるのは、誰もが人生に課せられたものを克服することが可能だってことだ。
それは俺自身が多くの時間を費やして体現してきたし、また自分や周りの当初の期待を乗り越えて突破してきたから、そうはっきりと言える。
そう、本当にこれは決して言いすぎじゃないんだけど、俺はこれまでの人生で何度となく打ち負かされてきたし、その都度自分自身を鼓舞し、人より一歩前に踏み出してきた。多くのことを上手く回してきたんだ。
かなり適当な訳である。(私です)
そしてアメリカンドリームを体現してきた男のセリフは、多少陳腐なものでも、説得力があるから不思議だ。
まとめ
実績が全てを物語る。
忍耐と努力で成功を勝ち取った親父と違って、才能で成功を掴み取ったジュニアが読めば「ふん、こんなの誰でも書けるさ」と本を放り投げるだろう。
しかし成功は成功。通る道こそ違えど、目指す高みは皆同じもの。
明日の成功を夢見るそこのアナタ。
この本を読めば自社ビルを建てられるかもしれませんよ。
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伝説のバイクカスタムドキュメンタリー!「アメリカン・チョッパー」
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