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【ボブという名の猫 感想】猫とミュージシャンの物語に感動した!

2017年9月4日

久しぶりに気持ちの良い映画を見ました。

猫とミュージシャンが主役の感動作「ボブという名の猫」です。

1日はちょうど映画の日だったので、何かいい作品はないかと探していたところ、この作品が目に留まり、仕事の後に劇場に直行。

予想以上の良作ぶりに、最後のほうは涙まで流してしまうという、最近の映画レビュー史上ではありえない感動をしてしまいました。

今回はそんなボブと人間の心温まる物語のレビューを書いていきたいと思います。

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ストーリー

イギリスのコヴェント・ガーデンでストリートミュージシャンをして生計を立てるジェームズ。

売れないミュージャンのジェームズは、その日暮らしで、住む家もなく、ごみ箱をあさって食べ物を探す、ホームレスのような毎日を送っていた。

ドラックの更生プログラムを受けていたジェームズは、友人のバズの誘いを断り切れずにヘロインの摂取してしまい、意識を失ってしまう。

気が付くと病院にいた彼を見舞いにきたのは、更生プログラムの担当者であるヴァルだった。

約束していた薬断ちを守れず、何度も謝るジェームズを見て”危ういもの”を感じたヴァルは、事務所に帰って渋る上司に「今度同じ過ちを犯したら、きっと彼は死んでしまう」と説得し、宿無しの彼のためにアパートを借りることを決める。

宿無しからアパート住まいになったジェームズの部屋に、ある日、一匹の茶トラ猫が迷い込んだ。

飼い主もおらず、彼のそばを離れようとしない猫に特別なものを感じ始めるジェームズ。ある日、ケガをしていたその猫を家の近くに庭で見つけて、近所のベティという女性に相談すると、動物病院の無料診察券を貸してくれた。

病院に行って診察を受け、受付で薬代の請求をされた時(薬代は有料)、自分の持ち金のほとんどが失われることにジェームズは大いに迷うが、しかし彼はお金を払い、猫を引き取った。

実はこのときのお金は、街でばったり出会った父親からもらったものだったのだ。

幼いころに両親が離婚し、父親に引き取られるも、義母と折り合いが悪くなり、家を飛び出たジェームズ。

自分は父親に捨てられたのだという思いが、彼の中でずっとしこりとして残っていたのだった。

そんなジェームズのもとに迷い込んだ茶トラ猫を、自分の境遇と重ね合わせてしまい、ついになけなしの生活費を薬代に変うことで、飼う決意を固めたのだ。

この日から、ジェームズと茶トラ猫の特別な毎日が始まった。

友人となったベティから「ボブ」と名付けられた茶トラ猫は、ジェームズと一緒にストリートで歌うときにも一緒だった。

猫を肩に乗せて歌うジェームズの姿が話題になって、たちまち人気者になる。

youtubeやインスタグラムで話題になる彼らに注目する雑誌社、ストリートで邪魔をしてくる犬好きの歩行者、猫を買いたいと申し出てくる親子、生活のために始めた雑誌売りで起こるトラブル・・・そして友人であり恋人未満のベティとの関係。

様々な困難や確執を乗り越えて、ジェームズは自分と向き合い、ドラッグを断つことができた。

ベティも薬中毒で亡くなった兄との思い出であるアパートを引き払い、新たな一歩を踏み出す決意を果たすことができた。

そして何よりも、我が子を見捨てたという罪悪感に長年悩んでいた父親と、見捨てられたことで心の傷を負っていたジェームズとがお互いに向き合い、和解することができたのだ。

その中心にはボブがいた。

そしてついにジェームズとボブの物語が本になる日が来たのだ。

映画の感想

映画の冒頭で街をさまようジェームズは、まさにホームレスそのもので、ごみ箱をあさるシーンや、その日のねぐらを探す様子、友人に誘われてドラッグで失神するという描写を見ていると、かつて見た「トレイン・スポッティング」を思い起こしてしまいました(これもイギリス映画でしたね)

そんな主人公の悲惨な日常の中に、ふと入り込んできた一匹の猫。

この猫こそが、この物語のもう一匹の主人公であり、ジェームズのかけがえのないと友になるボブです。

ボブは映画の中でも終始、淡々と猫らしい仕草や表情でジェームズのそばにいます。

最後まで何かをするわけでもなく、ただただシンプルに存在し続けるボブ。

ただ時折、向ける「まっすぐな視線」に何かただならぬ力というのか、強い意志を感じ取られて「はっ」とするときがありました。

そんなボブを的確に表現したのが、ジェームズが路上でライブするときに、いつも見に来てくれている初老の女性。

彼女はボブが大好きで、ボブのためにハーネスを作ったり、缶詰を差し入れたりしてくれていたのです。

そんな彼女がある日、ジェームズにこう言いました。

「私も昔、茶トラ猫を飼っていたの。茶トラはとても愛情深くて、一人の人間のそばから離れないのよ。きっとボブもそうなのね」

ボブのまっすぐな瞳は、茶トラの性質そのままにジェームズを追っていたのでしょうか。(この部分の台詞はうろ覚えなので自信がないのですが、他の方がレビューしているような「猫は意志が強く、人間以上の親友になってくれるわ」だったかなとも思います)

そんな純粋なボブの気持ちや存在が、ジェームズの心を癒し、まるで本当の自分自身を見るような気持にさせてくれたのでしょう。

実際にジェームズは最初から最後まで、人に優しかったし(自分を麻薬の道に再び引きずりこんだ友人も助けようとした)、周りの人間につらく当たることもありませんでした。

自分を捨てた父親とも仲直りしようとし、嫌われていると知りつつも、父親と義母の住む家にクリスマスプレゼントを届けにいったりもしました。

純粋でありすぎるがゆえに、人との関係で傷つき、それを癒すために麻薬に走ってしまう・・・

そして彼の歌う曲の歌詞も、そんな純粋さ、繊細さに満ち溢れている・・

そんなジェームスの優しさを見抜いて、きっとボブはどこからか現れて、ジェームズのそばでいることに決めたのでしょう。

ボブも、どこか誰かのもとで傷つき、癒しを求めて、さすらっていたのかもしれません。

そんな迷い込んできたボブを抱えて途方に暮れていたジェームズを助けた、近くに住むベティ。

見た目は60年代のヒッピー世代的な派手さがあり、ベジタリアンで動物愛護運動家という点でも「いかにも」的なキャラクターなんですが、実は彼女にも人に言えないトラウマがありました。

麻薬中毒で亡くなった芸術家の兄の思い出を忘れることができないこと。

そのため兄が死んだ後も、そのアパートの部屋で住み続けていたのです。

ジェームズとベティはボブの世話を通じて次第に仲良くなり、一緒にご飯を食べたり、クリスマスを祝ったりする関係になりますが、ベティは彼が薬物依存症の更生プログラムを受けていたことを知り、怒って関係を断ちます。

ベティは自分の過去やトラウマを隠すことなくジェームズに語ったのに、ジェームズは大切なことを隠していた・・・しかもジェームズが自分が絶対に許すことができない薬物依存症の人間だったということ・・

ジェームスは懸命に謝罪しますが、ベティは許すことができません。

仲直りできないまま、ジェームズは更生プログラムで完全に薬を断つ段階に来た時に、ベティの家を訪ねて、今まで嘘をついて悪かったこと、しばらく自分が家の外に出られないことや、その間のボブの世話を見てほしい、とドア越しに頼みに来るのです。

部屋に入って自分をじっと見つめるボブのそばで、じっとその言葉を聞いていたベティは、ジェームズの心からの言葉に心動かされて、協力を申し出るのでした。

そして3日間、苦しみ、もがいた後、ジェームズはようやく完全に麻薬から足を洗うことに成功します。

それを見ていたベティは、自分も人生の次のステップに上がる必要を感じ、兄の記憶が詰まった部屋を引き払うことを決めたのです。

ベティが新たな一歩を踏み出すきっかけ。

それはジェームズとの交流であり、そのジェームズとベティを結びつけたのもボブでした。

ジェームズ自身も麻薬中毒の道から抜け出す試練の3日間を耐えることができたのも、部屋で常にボブが彼を見守ってくれていたから。

ボブの存在がすべての皆を繋げてくれたのでした。

最後に父親です。

ジェームズの父親が登場したのは、冒頭で駅員にストリートライブを禁じられて落胆するジェームズを通りの向こう側から見つけながら、見て見ぬふりをして通り過ぎようとしたとき。

このときの描写で父親がジェームズに対してどう感じているかが分かりました。

父親はジェームスズの生みの母親とは離婚して、新しい妻と生活を共にしており、父親の新しい妻はジェームズのことを嫌っていたのです。

このときもジェームズが気づいて父親に近づきますが、父親の近くにいる義母を気にする様子や、憐れみを帯びて自分を見る視線に寂しさと疎外感を感じたのでした。

「自分は家族の一員ではない」

そんな思いがジェームズをますます孤立に追いやるのでした・・・

そして映画の終盤。

ジェームズが更生プログラムによる麻薬断ちの最終試練に耐えきった後、再び父親のもとを訪ねます。

玄関に出てきて、ジェームズを見て躊躇する父親。

しかしジェームズはこう言いました。

「今度こそ完全に麻薬から足を洗うことができたんだ。今日はそれだけが言いたかった。今まで僕のせいで父さんに恥ずかしい思いをさせてしまって、ごめん」

そう言って帰ろうとするジェームズを、父親は引き止めました。

そして一枚の写真を財布から取り出すと、ジェームズに手渡したのです。

それはジェームスの幼いころの写真でした。

「恥ずかしいのは私のほうだ。自分が父親としてどう振る舞えばいいのか分からなかった。私のほうこそ許してほしい」

写真と、このセリフで(少しうろ覚えですが)、父親のジェームズに対する愛情が消えていなかったことが分かった瞬間でした。

そしてこの瞬間こそ、この映画の中で一番感動し、思わず泣いてしまったシーンでもあるのです(涙)

二人の間に長い間わだかまっていた”何か”が、静かに溶けていったひと時。

玄関の奥から妻が「誰か来ているの?」と聞いてきますが、今度は以前のクリスマスパーティーのときのように苦し紛れに返答したりはしませんでした。

「そうだよ。私は息子と話しているんだ」  

この後、ジェームズのもとに彼とボブのストリートライブの様子をyoutubeで見た出版社から、書籍化のオファーがきます。

その話を受けたジェームズは本を書き上げ、本はサイン会が開かれるまでに人気を博します。

そのサイン会には、今までジェームズを助けてくれた人が皆来ていました。

ヴァル、ベティ、ストリートライブで応援してくれた初老の女性、父親、そして義母・・

もちろんボブはジェームズと同じ共同執筆者ですから、ジェームズと一緒にファンにサインをする立場です。(ボブのサインは肉球のハンコでした(笑))

次々に本にサインする中、最後に一人の大柄な男性がやってきます。

「まるで僕の人生そのものだよ」

ジェームズは顔を挙げて「ありがとう」と礼を言い、本にサインをしました。

そう。

このセリフとこの登場人物の風貌で、私にはすぐに理解したのです。

最後にジェームズに話しかけた彼こそが、まさにこの映画の物語の実在の主人公その人であり、ボブの本当の親友であるジェームズ・ボーエンなのだと・・・

こうして物語は終わり、最後に字幕が流れます。

「ジェームズは現在、音楽活動や執筆活動から手を引き、慈善活動家として活動しています。」

もちろん、

「今でもボブとジェームズは良き相棒です」

とのことだとか。

嬉しいですね。

いつまでも仲良く元気でいてほしいと思います。

最後に

ボブとジェームズの奇跡の関係は、まさに奇跡そのもので、きっとジェームズはボブがいなければ、ここまで劇的な人生逆転劇を演じることはできなかったでしょう。

それくらいボブのおかげで人生は変わったし、お金も得た。

それでもジェームズが素晴らしいと思うのは、お金と名声を得た後でもボブと一緒に暮らし、以前と変わらず優しいまなざしをボブに向けているということ。

もちろんボブはのほうは人間界のお金とか名誉なんかには興味がないニャン!という立場でしょうがね。むしろ美味しいツナ缶のほうが大事なのかもしれません(笑)

でも映画の中でも見せてくれたように、ボブの持つ眼差しや仕草は、単なる猫以上のオーラとか気品を感じますし、何より優しさを見いだせるんですよ、その瞳の奥に。

目は口ほどにものを言い、という諺もありますが、まさにボブの目はそう。

猫目線のカットも良かったし、ネズミとの攻防もトムとジェリーみたいで面白可愛かったですよ。

ジェームズとのハイタッチも十分よかったですが、やっぱり座ってじっとこちらを見る予言めいた眼差しが一番グッときました。

この作品では、音楽がボブの次に主要な役割を演じていますが、どれもが味があって、特に歌詞に心動かされます。

セカンド・チャンスは誰にでもある、それを歌った曲もすごく感動しましたね。

どれもが素朴だけど、心の琴線に触れる何かがある。

一人のミュージシャンと猫の物語には、音楽と夢と希望が詰まっているのです。


キャサリン妃がプレミアに来場!『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』予告編

追記

今回の映画鑑賞では、久しぶりにパンフレットを購入しました。

ふだんはあまり、というか、まったくパンフは買わないのですが、この映画に関しては鑑賞後にすぐさま買い求めにいったくらい、記憶に留めたいシーンが目白押しだったと思います。

実際のパンフの中身も、キャストやあらすじはもちろんのこと、撮影裏話やボブと原作者のジェームズ本人が来日したときの様子をまとめているなど、なかなか見ごたえのある内容でした。

こういうパンフは時を経ると情報が古くなるので、楽しめるのは今だけなんだろうなあ・・と思うと、少し寂しくなりますね^^;

でもボブの姿とハイタッチは一見の価値ありなので、映画を観に行かれるなら、ぜひとも購入をお薦めします!


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