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【007スペクター】原点回帰したジェームス・ボンドとその仲間たち

2015年12月19日

ボンド映画はダニエル版では前作「スカイフォール」に続いての映画館鑑賞だ。

今回の作品は、前情報や某巨大映画レビューの評判に触れることなしに観に行ったので、今回のこのレビューも追加情報なしに観たまんま、感じたまんまを記事にしていこうと思う。

とはいいつつ、映画のタイトルにもなっているスペクターが、かつての古いボンドに登場してきた組織と敵の名前ということぐらいは耳にしていたので、そこだけは前情報として頭に入れていたということを前提にして話を進めていきたい。

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序盤でいきなりボンド節炸裂!

いきなりインパクトのある髑髏のオブジェが登場。

毎回そうだが、ボンド映画はビジュアル面がかなりお洒落なので、そこだけでも見るに値すると思う。

今回のこの髑髏人形も、メキシコで開催されている「死者の日」のカーニバルに出てきた目玉商品で、死を象徴する存在として髑髏が前面に押し出されている感じだ。

人形だけでなく、パレードで仮装している人たちや、練り歩く一般の人も、みなそこかしこに髑髏や骸骨の仮面や衣装を身にまとっているのだ。

そんな中でひときわ目立つスタイリッシュなスーツを身にまとった男が登場。

これが序盤にボンドに殺される組織の殺し屋スキアラだ。

ステッキを片手に颯爽とパレードの中を闊歩するスキアラの後を追うように、これまた髑髏の仮面をかぶった女連れの男が登場する。

スキアラとは対照的に黒の骸骨スーツを身にまとい、見るも美しい仮面の女性を連れにしたその男こそ、我らがジェームス・ボンドだ。

冒頭のこのシーンだけで、ボンドが誰かを追い、そして何かを行うだろうということを容易に想像できるのが、定番シリーズアクションの良いところ。

その言葉通りにボンドは鋭い視線を仮面の端からのぞかせてスキアラを追いかけていく。ホテルに入ったボンドと女性は、部屋に入るなり抱き合ってラブシーンを展開すると思いきや(これも定番)、

「すぐに戻る」

と言って、ベッドで男を待つメキシカン美女を置き、颯爽と窓から出ていくところが、これまたクールすぎるぜ。(自分なら部屋にずっといます笑)

屋上から屋上を身軽に伝っていくボンド。

そして懐からスナイパー銃を取り出すと、目標のいるビルに向かって狙いを定める。しかし次の瞬間・・・・

とまあ、序盤からいきなり超絶アクションの始まりという感じになるのだが、そこは見てのお楽しみということで。

なぜこの序盤にこれだけ記事を割いたかというと、この一連の流れにボンドムービーの魅力がすでに存分に詰まっていたからだ。

仮面の端から見せる鋭い視線とスーツ姿のクールないで立ちは、まさにダンディズムの極致といえるボンドの真骨頂。

鍛え上げられた鋼の肉体と、それを包む超絶スマートなスーツの取り合わせは見るからに挑発的で、さらにそこから美女と熱いキスを交わしベッドにもつれこむと思いきや、そのかたわらで任務を遂行する冷血さがなんともいえずセクシー。

スキアラを追ってホテルの部屋から出ていくときも、すでに熱くなった美女の誘いをさらりと躱すそのクールさが小憎らしいほどダンディで、そこから目標を追って身軽にビルとビルを飛び移る仕草は、まさに中型肉食獣ジャガーのようなしなやかさと俊敏さを同時に兼ね備えているかのようで、とても、とても魅力的だった。

そこから先のアクションや、エンディングに至るまでのプロットはまあおまけといっても過言ではないくらいに、自分にとっては冒頭のこの流れだけで十分に満足なのである。

流れゆくボンドの上司たち

スキアラを退治した後は美女と熱い一夜を過ごした(と思われる)ボンドは、その後英国情報部のオフィスに戻って、上司Mから厳しい叱責を食らう。

休暇中だったにも関わらず、異国の地で派手なドンパチをしてしまった責任はどうしてくれるんだこの野郎!と突っ込まれるも、涼しい顔をして「たまたまです」と答えるボンドに、さすがのMも「ゴルァぁぁつ!!」ブチ切れそうになるが、そこは大人の対応ということで、ボンドをいったん下がらせようとする。

しかしMの部屋に新たなMI5の責任者であるCが入ってきたことで空気が一変。

このCは新任責任者であるにも関わらず、内務省の長官のご学友というコネと、スパイ活動の高度機械化の時代の風を受けて、ある意味古き良き世界だった情報組織を政府の一元管理のもとに組織ごと統合しようと画策していたのだ。

もちろん古い世代に入るMやボンドたちに受け入れられるはずもなく、着任の挨拶の席でも当然ながら冷たい火花がパチパチと放たれる。

Cは単なる時代の要請を受けた嫌な官僚タイプの上司というだけでなく、実はその背景に今回のラスボス「スペクター」の影響力が濃厚に見られていて、その後も執拗にあらゆるチャンネルを通じて情報の世界的な一元化を目指すのだ。

こうしてMI5(本部)の上司と、ボンド属するMI6(支社)の社員たちとの華麗なリストラ劇という、スペクター追跡と並ぶもう一つの話の骨子はゆっくりと確実に始まっていくのである。(実はこのあたりの流れの方が、実際の情報世界に携わる人たちにとってリアルな死活問題なのかもしれない)

気になるのが、前作からボンドの新たな上司となったM(レイフ・ファインズ)の生え際だ。

ファインズは、「ナイロビの蜂」でレイチェル・ワイズ(ボンド役のクレイグの奥さん)と共演した英国が誇る名優の一人で、個人的にはリーアム・ニーソンの弟じゃないのか?と思うくらいリーアム兄貴一門の印象が強い俳優さんなんだけど、それよりも何よりも、この人の額の劣化がはなはだしいことのほうが、映画の内容よりもある意味終始気になって仕方がなかった。

レイフ・ファインズ

新しい情報化世界の流れと、今までの自分のキャリアとの葛藤という役柄からすれば生え際のきわどさもフルに納得といえるのだが、それにしてもそれにしてもだよきみぃ、劣化しすぎじゃないか?と思わず何度声に出してスクリーンに叫びたかったことか。

自慢じゃないが、私は人のヅラを見極めるのが非常に得意で、偽装した頭部の8割は見た瞬間に見透かせるだけでなく、さらにそこから使用歴何年とか経年劣化の程度を瞬時に見極めるくらいに達人の域に達してしまっているので、その私からすれば、このファインズの額の神の領域はあまりにも刺激的で目に痛すぎたのだ。

Cを演じたアンドリュー・スコットのそれもかなり大胆なおでこを保持していたが、彼のは明らかに若禿げで、これからの人生はたぶん順調にブルース・ウィルスばりのスキンヘッダーへの道を歩んでいくことが容易に予想できるので面白くとも何ともないが、ファインズのそれは、むしろ邪推を起こさせてしまうというか、

 大丈夫かきみの私生活は?

とか

食生活とか悩みとか何か問題あるんじゃないか?

などと、名もなき極東の庶民にいらぬ心配を催させてしまうほどにイマジナブルでドリーミーな額をお持ちなのだから、ある意味罪作りなヘッドなのである。(レイフ的には「ほっとけ!」の世界だが)

そんなMのイマジンなあれこれに口を挟みこむ暇もなく、映画はどんどん先に進んでいく。

ボンドがなぜメキシコくんだりまで出かけて、テロリストを追っかけたかといえば、それは亡きかつての上司であるM(ジュディ・デンチ)の遺言ビデオに、それが指示されていたからであった。

旧Mがなぜ映画の全貌を知っているかのように謎かけのような示唆を与えたのかは、たぶん彼女はボンドの幼き頃の秘密を知っていたからだ。(確か前作「スカイフォール」では、そのあたりのことには触れてなかったはず)

旧M(ジュディ・デンチ)

メキシコで活動するテロリストの実態や、彼の所属する組織スペクターの存在、そしてその組織のボスが誰で、彼がボンドとどういう歴史や繋がりを持つとかも。

でもね・・・

それやったら、自分が生きてるときに敵ボス捕まえとけや

と今は亡き女ボスに突っ込みたいところだが、それをすると映画の設定自体がもろくも崩れ去ってしまうので、一ファンとして野暮な詮索はやめときます。

こうしてボンドが旧Mがビデオで示唆しただろう、フランツ・オーベルハウザーの存在、彼が全世界の裏社会を支配するスペクターの首領であるということを知ったのは、自分が殺害したスキハラの葬儀に参列して、そこで見かけた未亡人ルチアを誘惑して得た情報からであった。

スペクターとその愉快な仲間たち

オーベルファウザーとその組織スペクターの真相に迫るため、ボンドは急きょ、イタリアに飛ぶ。

そこで行われていたスキハラ(序盤でボンドが倒した組織の殺し屋だ)の葬儀に参列するためだった。

そこに参列するスキハラの未亡人と接触し、組織の秘密を知るためである。

このときに未亡人を演じたモニカ・ベルッチがすごくセクシーだった。

スキハラの妻ということで、組織の秘密を知るものの一人として殺される運命にあったが、間一髪でボンドが救い、彼女から会合の場所を教えてもらう代わりに、諜報部からの保護を約束されるという流れ。

この後ボンドは未亡人ルチアと熱いひと時を過ごすという、これまたお約束の流れだ。

出演シーンはこのときのボンドとの絡みだけだったが、さすがは往年の美女というか、その妖艶さは熟女になった今でも十分に妖艶だったなあ。

そんな熱い夜を過ごした後、彼女から教えてもらった遺跡の地下で行われるオーべルファウザー主催の組織の会合に潜入するのである。

そこで見たのは、テーブルを囲んだ幹部同士の会談で、組織スペクターがいかに世界の隅々にまで影響力を及ぼしているとか、国境なき医師団のリーダーを殺害しろとか(偽医薬品販売ルートを暴かれたため)、政治家を篭絡してビジネスを有利にしろとか、某広域暴力団真っ青のワールドワイドな悪の手法が、まるで大企業の会議のごとくに粛々と行われていた。

そんな中で突然、後光を背にして姿形を謎にしたオーベルハウザーが登場。

しずしずと着席した後に、声を潜めて近くの側近に何事かを指示すると、うなずいた側近は直立不動でその内容を幹部に伝えた。

ボンド暗殺を引き受けた別の殺し屋を倒せる奴がいたら、そいつに大事な任務を授与する、ということだった。

「???」

と皆が困惑する表情を見てほくそ笑む趣味の悪いラスボスぶりが素敵過ぎるとともに、さらに悪趣味だったのが、この指令を真に受けた力自慢の部下ミスターヒンクスが進み出て、

「俺ならこんなモヤシ野郎なんかより、よっぽどいい仕事しまっせ!」

とばかりに、そのモヤシ野郎な同僚(男前で強そうだったが)に殴りかかってボコボコにしばき倒した挙句に、目に両指を突っ込んで死霊のはらわたのゾンビのように殺して任務を奪った冷酷無比な一幕。

まるでルパン三世の敵キャラのような漫画チックなノリというか、でも描写はやたらに激リアルで意味不明な展開に、「これぞ古き良きボンドムービー!」と心の中で声をあげたのは私だけではないはずである。

昔のボンド映画には、こんな意味不明なやりとりというか、流れが結構あって、これって必然性があるのか?とか、それやって意味あるの?というシーンがたんまり含まれていた。今回の作品は原点回帰という意味合いが強い作品だと思うけど、この一連の流れでも、そういうナンセンスな流れが多分に含まれているのかなと、このシーンで強く感じてしまったわけだ。

そんな無茶ぶりともいえる任務奪回劇をよそに、ついにボンドはオーベルファウザーに見つかってしまい(初めから気づかれていた)、さっそく新たな任務を拝領したミスターヒンクスが執拗にボンドを追跡することになるのである。

この追跡行は映画の終盤近くまで長きにわたって続き、ボンドの幾度にわたる撃退劇もかなわずに、ついには二人がかりでヒンクスをぶち倒して列車の外に投げるという荒業によってのみ、そのムキムキな勇姿を永遠に去らしめることができたぐらい、今回の敵キャラの中でとりわけ秀逸な存在なのである。

そしてこの役柄を演じた俳優さんを見て最初に思ったのは・・・

室伏にそっくりじゃねえか!

室伏とは、日本のハンマー投げ競技をけん引する第一人者「室伏広治」氏のことであり、アテネ五輪とロンドンではそれぞれ金と銅を獲得したまさに世界の「ムロフシ」のことなのである!

その彼がついに映画界に進出、それもボンド映画で栄えある敵役で007を追い詰める役柄か!と思わず心の声を上げた序盤一時間弱なのである!!

ボンドをぎりぎりまで追跡劇はリアルに堂に入っていて、さすがは長年のトレーニングで精神と肉体を極限にまで追い詰めたトップアスリートのことだけはあるよ!カーチェイスも雪山行軍もなんのそのアルヨ!と、なぜか謎の中国人風に激賞する謎の一時間強なのである!!!

そんなミスターヒンクス演じるのは、デビッド・バウティスタ氏で、アメリカ人のプロレスラー兼俳優さんです。(いやしかし室伏に似てたぞ)

このヒンクスのインパクトは強烈で、それこそ額が気になる男ファインズに最後まで目が離せなかったのと同じくらい、彼のボンドを追い詰める様は圧巻だった。

今回の映画はボンドのクールさと、この二人の脇役の存在があってからこそ、自分の中で「歴代ほぼ最高」といえるレベルにまで評価を高めれ得た要因ではなかろうか?

ヒロインの評価

そこへいくと、今回のヒロインであるレア・セドゥの存在感はいまいちだった。

フランス人女優独特のコケティッシュで小悪魔的な魅力に満ちていたものの、いかんせんボンドの相手となるには少々若すぎるような気がしたからだ。(むしろ「ミッション・インポッシブル / ゴースト・プロトコル」の女殺し屋モロー役の方が映えていた)

しかしボンドはこのかつての敵の娘に自分の過去と同じ匂いを感じたのか、シンパシー以上の感情を抱くようになる。

ラストは女王陛下の007(女王陛下の007 スチールブック仕様 [Blu-ray] )のようなエンディングを迎えることになるのだが、終盤でラスボスであるオーベルハウザーを追い詰めたボンドの行動が、まさに彼女との約束を体現したともいえて、ボンドといえど人の子という感じである。

最後に

序盤にMが新しい上司であるCに向けた言葉が、このボンドの最後の行動に華を添えたともいえて、セリフの妙が映画の質を劇的に上げる良い例だと思った。

今回の作品は歴代ボンドムービーの中でも、かなりの上位に入るレベルだと思うし、筋立てもさることながら、映画を盛り上げる映像美や音楽も最高度にエキサイティングである。

youtu.be

特に主題歌はイギリスで最も旬といわれる実力派シンガー、サム・スミスを起用し、その余韻が残る甘い歌声は序盤に流れる幻想的なテーマムービーとすごくマッチしていて、大変見応え聞きごたえのある出来栄えになっていた。

毎回最高レベルのアーティストがボンド作品にいろいろな形で参加しているけども、今回はこれまで以上にそのレベルがすごくなっているなあと映画全体を見て実感。

まさにボンド映画は時代の先端を進んでいるのだ。

最後にこの作品で最も心に残った言葉を。

「殺しの許可を持つということは、殺さない許可も持つということだ」

 

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