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【博士の異常な愛情】壮大なブラックユーモアに満ちた戦争コメディー

2007年11月20日

某ブログで絶賛してたので見てみることにしました、「博士の異常な愛情:原題(Dr.Strangelove Or: How I Learned To Stop Worrying And love The Bomb)」。

白黒なので恐らく古い映画なんだろうと思ってパッケージを見たら、なんとびっくり。1964年の映画なんですね。

やっぱりめちゃくちゃ古い!

でも内容は意外に古さを感じさせないところは不思議です。

その某ブログでは「ブラックユーモアが効いてて最高!」みたいな感じで大絶賛だったのですが、実際に見てみると「まずます」の感想でしたね。

以前からこの映画の噂は耳にしており、監督も奇才スタンリー・キューブリックということで、かなり変わった作風を考えていました。
博士の映像やタイトルから想像していた内容は、「気の狂った科学者が新兵器を使って何かやらかす」といった感じでしたけど、実際には、

気の狂った将軍が部下に命じてソ連に核爆弾を打ち込む

というもの。
博士は最後の方にメインで出てくるので、主役というには、少し無理があるように思えます。
作品全体はモノクロで作られており、1960年代の世界観が存分に出ている感じで、映像から伝わってくる臨場感や迫力、戦闘シーンや爆撃機の映し方は、とても40年以上前に撮られたものとはおもえないほど、リアルさ満点でした。

では次のターンで軽くあらすじを紹介していきます。

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ストーリー

物語は某米国空軍基地の司令官が、ピーター・セラーズ扮する英国空軍の交換将校に、秘密作戦の実施を命じるところから始まります。
最初は訓練かと思っていたセラーズでしたが、やがて将軍が本気だと知ると、疑いながらもそれに従います。

やがて命令は部隊全体に実施され、兵士のラジオの没収、基地の完全封鎖、近づく者は攻撃せよ、というところまで発展。
訓練飛行中だった爆撃機も指令を受け、「ソ連の基地に核爆弾を落とす」ことになります。

一方で、基地司令官の言動に不審を感じた国防省は、緊急会議を開き、大統領を始めとした国家首脳が事態の収拾にあたることに。

しかし基地が完全封鎖にあること、通信手段が遮断され連絡がつかないこと、さらには核兵器を積んだ爆撃機に帰還するよう命令するには、基地司令官の暗号が必要なことなどの悪条件が重なり、事態は悪化の一途を辿り始めます。

また一方の基地で事態に巻き込まれた英国将校のセラーズは、必死に司令官に作戦の中止を求めますが、司令官は聞かず、逆に基地に向かってきた陸軍部隊と戦闘を開始することに。

爆撃機は刻一刻と目的地のソ連基地へ。

最悪の状況の中、セラーズはついに、司令官に作戦を実施した理由を聞き出すことに成功するのです。

その内容とは・・・・・・

感想

以上が大体のあらすじです。

というか、この後からが、映画の核心部分になります。

基地司令官の反乱の理由も実に意味不明だし、まさに「発狂」という言葉が最もふさわしいかと。

なぜあんなことを言い出したのか、未だにさっぱり分かりません。

水爆だから「水」なのか?

誰か司令官の精神分析をしてほしいものです。(詳しくは映画をご覧になってください)

ラストシーンも奇才監督の名にふさわしく、実に簡単明瞭。

世界各地で映し出されるキノコ雲に合せて「それではみさなん、さようならー」と女性の美しい歌が流れるシーンで世界の終焉を迎えるのですが、その無残さとは裏腹に、全くのどやかな曲調で終わりをつげるギャップに思わず笑ってしまいました。

その博士ですが、 これがまたキレてるキャラクターで面白かった。

作品のタイトル名になってる割には登場シーンは後半のわずかだけだったのですが、インパクトは強烈!

ドイツ移民で元ナチスの研究者という設定で、車椅子に座って首を横に傾けて話したり、右手の義手が無意識のうちに上がって「ハイルヒトラー!」のナチス式敬礼をしようとするのを、左手で必死で押さえたり、ドイツ時代の名前を当てて、そのまま『ストレンジ・ラブ』(奇妙な愛)という英語名にしていたりと、マッドサイエンティストぶりが光ってました。

特に最後の方で、突然、車椅子から立ち上がって、「歩けたぁ!」と喜ぶシーンは秀逸。

核爆弾で世界が破滅にという時にあのリアクションはないやろ!という感じで最高です(笑)

映画のブラックユーモアぶりを最も象徴しているシーンだったですねえ~

あと面白かったのは、発狂した司令官の上司である将軍と、爆撃機の隊長ですかね。

将軍の方は、もう始めから徹底した反共の軍人で、会議でも「共産主義のやつらは信用できん!」と終始核攻撃を主張しており、実際の将軍が見たら「ワシ、こんなアホやないでぇ!」と怒鳴ったに違いないほど^^

好戦的で猪突猛進のバカ軍人に描かれてました。個人的には、こういうキャラ好きなんですけどね。

この反共の将軍を演じるのが、ジョージ・C・スコットという俳優さんでして、この6年後に公開された「パットン大戦車団」という映画作品で、第二次世界大戦で戦車軍団を指揮したパットン将軍を演じてました。

実際のパットン将軍をほぼ史実になぞって演じたようですが、このときもキレキレの熱血将軍ぶりが光っていた感じでして・・・

パットン将軍は世間では「戦争好きのどうしようもない人」という評価があるようですが、実際には戦略眼に優れ、冷戦の到来をいち早く見抜くなど、政治的な感覚もなかなかのものだったとか。

事実、戦後は政治家を目指したようですが、その過激な性格が災いしてその道は諦めざるをえなかったようです。

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一方の爆撃機の隊長のほうは、最後は爆弾にロデオ乗りして逝ってしまうのですけど(このシーンも好きです)、発音がやたらと南部訛りであることと、実施する作戦が訓練ではなく本物ということが分かると、作戦指令書など機密書類を入れてある金庫からテンガロンハットを取り出して、ヘルメットと代えてかぶる所が単細胞ぽくて良かった

アメリカ軍の現場指揮官てテンガロンハット好きですよね。

戦争映画でしょっちゅう見ますよ、こういう帽子かぶった下士官。

南部訛りってのも、何かを象徴しているのでしょうか?

こういう奇才監督が作る映画は、どのシーンにも何か意味がありそうで、いちいち考え込んでしまいます(笑)。

そして最後に驚いたのは、ピーター・セラーズが一人三役をこなしているということ。

英国将校と大統領、そしてあのマッド・サイエンティスト「ドクター奇妙な愛(ストレンジラブ)」がそうなのです。

最期まで一人三役だとは全く気付かずじまいで、おまけにこの俳優さんがピンクパンサーのクルーゾー警部だったということも後で知り、「おお!」と二度の驚愕。

イギリスのコメディ界ではかなりの大物で、さまざまな作品で活躍しましたが、1980年に心臓発作で亡くなっています。

映画の中ではイギリス空軍の将校でしたが、実際にセラーズは第2次大戦中は英空軍の兵長だったらしく、劇中で基地司令官に戦争中のことを聞かれて、

「日本軍の捕虜になったときは拷問を受けましたよ。もちろん何も喋りませんでしたが。しかし、あの連中が高品質のカメラを作ることが未だに信じられませんな」

と答えてました。

この話の響きは実際に体験したっぽく、後半部分の日本のカメラについて言及するくだりは、当時の世界情勢を表しているようで何気に面白いです。

まとめ

全体的にシニカルでブラックな作品。

フェリー二監督やゴダール監督の作品ほどではないにしても、この映画の面白さが分かるには、それなりの知識と感性が必要となりそうな感じがしますね。

ロッキーやダイハードみたいな分かりやすい映画大好きの僕にとっては、少し苦手です。

でもまあ、所々で爆笑させてもらいました。

それにしても日本語のタイトル長すぎだ!

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