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【セブン・イヤーズ・イン・チベット】ブラッド・ピットの熱演に感動した!

2005年6月14日

オーストリアの登山家に扮したブラッド・ピットが、様々な苦難を乗り越えてチベットに行き着き、そこで出会ったチベット宗教の教主ダライ・ラマ14世(まだ子供)と友情を育む物語。

感想を述べようと思いましたが、ただ簡単なあらすじを書いて自分の感想を述べるというスタイルでは、この映画の奥深さを表現できないのではないかと思います。

なので、ここはあえて詳しいストーリーと描写を、間に自分の感想を交える書き方で、映画の全容をなぞっていきたいと思います。

ほぼネタバレになりますので、まだ未見の方は、最後のまとめ文のみご覧いただいて、映画を観て頂きたいと思います。

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オーストリアからチベットへ

時はナチスドイツ支配下のオーストリア。

登山家のハインリヒは子供が生まれるまで家にいてほしいと願う妻の願いを聞かず、ドイツの国威発揚のために企画されたヒマラヤ登山に向かいます。

プラットホーム上で泣き崩れる妻と、そんな彼女を抱きかかえるように、家に残すことになる身重の妻を託した友人が寄り添ってホームを立ち去る姿を列車から見送るハインリヒ。

もうこの状態から、いずれ起こるだろう破綻の予兆を感じさせます。

(来るべきではなかったのだろうか・・・)

いまだ見ぬヒマラヤの山頂を望みながら、ハインリヒは胸元に残る不安をぬぐいきれないように、何度もそう後悔します。

雪崩や怪我による登頂中断の果てに登山チームを待っていたのは、イギリス軍による勾留。

彼らはドイツ帝国の戦時捕虜としてインドの捕虜収容所に抑留されることになったのです。

しかし機転を利かせてチームの一団は脱走に成功。

ハインリヒはチームリーダーだったペーターとともに、チベットに逃れることになります。

逃走中に気が付いたこと。

それは生まれてくる子供への愛情でした。

ハインリヒが身重の妻を見捨ててまで異国の地の登山に固執したのも、すべては子供の誕生を見たくなかったからです。

その説明は映画の中では詳しくされてはなかったのですが、おそらくハインリヒの好む自由が子供という生命の誕生によって束縛され、責任を負うことを避けたかったからなのでしょう。

何年にも及ぶ捕虜収容所とその後の逃亡生活の間に妻と別れ、成長したまだ見ぬ子供からは

「もう手紙は送らないでください。父親でない人からの手紙は読みたくありません」

という便りを遠い異国の地で受け取った彼の心の中には、たとえようのない寂しさと哀しさ、なにより自分は一体何のために生きているのだろうという空しさを、強く感じることになるのでした。

逃亡中の唯一の相棒ともいえるペーターとも、一時はハインリヒの有能な男にありがちな独断専行と独善的な性格により、疎遠になっていたのですが、自分の過ちに気付いたハインリヒ自身により、友情を取り戻します。

遂に辿り着いたチベット

そこはまだ近代文明に浴していない楽園で、長く厳しく異国人の侵入を拒んでいたためか、豊かな自然と人々の素朴な気分が未だにそこかしこに残っていたのでした。

そこで出会った一人の美しいチベット女性との出会い。

しかしその出会いすらも、ハインリヒの生き方を否定するかのように、彼の思いのままにならないのでした。

「あなたは何でも一番にならないと気が済まないようだけど、それは私達の文化とは違う。私達は他人とは競わないのよ。」

結局彼女が選んだのは、相棒でもあったペーターだったのです。

異国の地での恋も実らないまま、悶々とした日々を送っていたハインリヒの元に、ドイツ降伏の知らせが入ります。

ハインリヒは帰国を決意し、その準備をはじめますが、そのとき、宮廷からのお呼びがかかるのでした。

「ぜひあなたに会いたい」

14歳だったチベットの精神的指導者ダライ・ラマ14世(後の著名なチベット指導者)でした。

現在も精力的に活動中である)が、ハインリヒに興味を持ち、ぜひ外国のことを教えてほしいと呼び寄せたのです。

これに応じたハインリヒはそれから数年間、幼きダライ・ラマに様々なことを伝え、そしてともに学んでいきます。

それまで育った世界とは全く異なる思想観、宗教観に最初は戸惑いつつも、それによって自分の殻を破ることを可能にし、今までの自分自身、そして本当に自分が望んでいることを確信するのです。

「子供に会いたい」

心からそう思うのでした。

しかし時代は動乱を迎えます。

平和だったチベットにも戦火が訪れようとしていたのです。

国民党軍との戦いに勝利した毛沢東率いる中国共産党の人民解放軍が、チベットに攻め込んできたのです。

わずかながらの兵力と貧弱な武器しか持っていなかったチベット軍は瞬く間に追い込まれ、窮地に追いやられます。

あとはただ最後の最後まで戦い続けるという将軍と配下の兵士の強い意思のみが、チベット独立の唯一の希望となったのです。

しかし。

その望みはあっさりと断たれるのでした。

秘書官から大臣まで昇進した切れ者のジクメが、最前線で人民解放軍に降伏を申し出たのです。

将軍たちの反対を押し切り、解放軍を受け入れたことで、チベットは独立国としての長きにわたる歴史を自ら閉じたのでした。

「あのまま降伏せずにチベット全土でゲリラ戦を展開していれば、いずれ外国の支援を受けて中国軍を撃退できたかもしれなかったのに」

そんな声が漏れる中、ハインリヒはダライ・ラマの元を訪れ、帰国の意を伝えます。

「私はこの国の民の心の指導者だから、最後まで彼らのために祈るよ」

ダライ・ラマはそう言って、笑顔でハインリヒと別れを告げます。

別れの日、ハインリヒはペーターの元を訪れます。

この地でチベット人の妻と生涯を過ごすと決心したペーターとは、おそらくこれが最期になるだろうことを思いながら。

「このバター茶は旅路に出る友人に振る舞う伝統的なものなんだ」

そういって、バター茶が苦手なハインリヒに二杯目を進めます。

いらないよと拒むハインリヒを制して、ペーターはさらに二杯目を注ぐのです。

仕方なく飲もうとしたハインリヒの手を止めたペーターは、

「二杯目は飲んではダメだ。そのお茶はそのままテーブルに置いておくんだよ。再び友人が旅から帰ってくる、その時まで」

ハインリヒは黙って親友の目を見つめました。

ペーターは静かに頷くのでした・・・

ハインリヒは荷物を背負い、チベットの地を後にします。

もう二度と訪れることが無いだろう、美しい楽園の地を後にして・・・・

家族との再会

その後、故郷のオーストリアに帰ったハインリヒは、かつての妻、そしてかつて身重だった妻を託した友人の家を訊ねます。

そう。

ハインリヒの妻はハインリヒと別れた後、彼の友人と一緒になることを決めたのでした。

「やあ」

もはや異国の地で苦しんだ後悔の念などはありません。

ハインリヒは素直に元の妻に挨拶をし、友人に笑顔を向けます。

そして向かったのは、彼のまだ見ぬ息子の部屋でした。

「お父さんじゃない人の顔なんか見たくない!」

そういって、部屋の奥のクローゼットに隠れる息子。

そんな息子の隠れる戸を横目で見ながら、ハインリヒは部屋に入っていき、床に座ると、手に持った箱をゆっくりと下に置いて、その箱を開けます。

蓋の裏側に美しいチベットの紋章が描かれた箱は、開かれると同時に、美しい音色を奏で始めるのでした。

そう。この箱は映画の序盤でダライ・ラマ14世が手に持っていた、チベット製のオルゴールだったのです。

ダライ・ラマから贈られたそのオルゴールを、ハインリヒは旅での思い出とその間に感じた様々な記憶を息子に譲り渡そうとしたんです。

ダライ・ラマ14世やチベットの人々が持つ、故郷への誇りと愛着、そして美しい楽園への郷愁も同時に・・・・

やがて時を経て、ハインリヒは息子の手を引き上げて、山頂に登るのに力を添えます。

これが初めての親子二人の登山だったのでしょうか。

山頂で座り、遠くを見つめたハインリヒの眼差しは遠くを見つめて離しませんでした。

なぜか哀しみを帯びた目。

まるで、はるか彼方でかつて過ごした楽園の失われた姿を悲しむかのように・・・・(終わり)

まとめ

最初から最後までばっちりと書ききってしまいました(笑)。

観終わって得た感想は、チベットが受難した戦乱を悲しむというよりも、一人の男の苦悩と人生、そして失った楽園は二度と戻らないという、心の内面に迫るような、不思議な悲哀感というべきでしょうか。

ブラッド・ピットという、どちらかといえば、言葉の少ない、体で表現するタイプの俳優ならではの役柄だったのではないのかとも感じます。

出会いと別れ。

それが人生というものでしょう。

血なまぐさい国と国との争いを描いたことで、侵攻した側の当事国だった中国は、この映画を上映禁止にし、監督と主演のブラッド・ピットを無期限に国内立ち入り禁止処分にしたといいます。

この映画は実話を元に作られたそうで(ハインリヒ氏の著書が原作)、ずいぶん後にハインリヒ氏とダライ・ラマ14世が会う機会があったようですね。

私が感じたこの映画の感想は、戦争がどうのというよりも、一人の男の哀しみと人生の意味を考えさせられたような気がします。

もしそれが監督の意図だったとしたら、中国政府の過剰な反応は無意味だったかもしれませんね。

他民族の蹂躙はどこの国も行っている蛮行で、いずれも国の歴史的恥部と認識しているのですから・・・・

いつの日か争いのない平和な世界が訪れるよう願ってやみません。

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